おっさんの間で
俺は仕事というのが嫌いだ。
何が悲しくて朝からおっさんに囲まれながら職場へ向かわなくてはならないのか。この中央線のこの時間というのが非常に憂鬱だ。
そして職場に着いたら着いたで、この時期は電話が鳴り止まない。おっさんの決算書の悩みを聞きながら電卓を叩き、「こうしてみてはいかがでしょう」とテキトーな指示を出す。おっさんは時に俺の指示通り動き、時にトリッキーな動きをする。後者のおっさんはタチが悪い。こいつらを正すのが俺の仕事。
割に合わない仕事だ、と思う。おっさんらは平気で億単位の間違いをする。それを正す俺の月給はその千分の一くらい。割に合わない。
同僚は居る。3人ほど。
俺と同じ仕事をして、同じ悩みを抱えている奴らが居る。彼らは俺と同じく、おっさんの悩みに日々立ち向かっている。
皆、気の良い奴だが中には、おっさんとのイライラする電話が終わったあとで、電話をデスクに投げつける猛者もいる。「なんて失礼なことをするのか」と同僚に問うた。「あなたの真似です」と言われた。返す言葉もなかった。そういう、気の良い奴ら。
今日は午後9時で仕事を取りやめ、飲みに行った。皆でさんざっぱら酒を飲み、揚げ物を食い、そうして俺は午前零時発の中央線で家に向かっている。周りをそれはやはり、多数のおっさんに囲まれながら。