目が覚めたら午後9時を過ぎていた。やばい、と一瞬、思う。うちの職場は9時始業だ。手元のスマホには、無断欠勤を問うラインが来ている。
一瞬うろたえて、しかし、すぐさま平静を取り戻す。
そもそも今日は仕事を休むと(勝手に)決めていた日だ。だからやがて陽の昇る朝方5時くらいまで、4件くらいハシゴしながら飲み歩いていたのだ。もともと、今日は休む(と昨夜飲み歩きながら決心した)予定だった。なんら恥じることはない。
スマホを手に取り、職場の電話番号を入力する。そしてベッドの上で土下座の体制を取りながら、一息入れて、発信ボタンを押す。
この土下座の体勢に謝罪の意味など一切ない。ただこういう体勢を取りながら電話で話すと、とても体調が悪そうな声が出る。読者諸賢には一度お試し頂きたい。
「すごく体調悪そうですね」という一言を引き出しておいて、満足して電話を切った。ミッション・コンプリート。今日の仕事はこれで終わりだ。これからどこかに美味しいご飯でも食べに行こう。無理して仕事に行く必要などどこにもない。俺ひとり居ないところで、どうにかして世界はまわっていくのだから。