愛しさと切なさと心弱さと

  初めて競馬へ行った。知り合いに誘われて。

  賭け事は嫌いだけれど、悪くなかった。なにしろ競馬は100円から賭けることが出来るし、競馬新聞の予想通りに賭ければその新聞代くらいは稼げるのだ。

  

  一番面白かったのは、レースの終盤で玄人らしく酔っ払ったおっさんが「そのまま、そのままだ!  余計なことすんな!」と叫んでいたことだった。おっさん自身が余計なことをしに競馬場へ来ているのに、その言い方はとても面白かった。

 

  午後1時から5時前くらいまで競馬場にいて、結果はプラス500円くらいだった。時給100円。ハイボールを飲みながらそれだけ稼げれば言うことはない。

  

  しかし競馬を見ているとどうにもやり切れない気持ちになる。競馬新聞には勝つ馬の予想が書いてあって、特に注目にも値しないような馬も沢山いるわけだ。そして結果もおおよそ、その通りになる。期待されていない馬は大抵、実際に結果を出せない。どんなドラマが裏にあろうが、そんなことは誰も見ていない。勝つか、負けるか。酔っ払った人間が、そこだけに金を賭ける。そして負けが続くと彼らは馬刺しに姿を変えて食卓にあらわれるわけだ。

 

  やり切れない。と、思う。どうにかすべきかもしれないと思う。

  思うだけだ。